成年後見

 2000年4月に成年後見制度が発足して,早10年以上が経過しました。戸籍への記載の廃止,本人の意思の尊重および身上に配慮する義務が成年後見人に課される(民法858条)など旧制度から大幅な制度の改善が図られました。結果として件数も大きく増加し,平成25年12月末日時点で17万6564人が成年後見制度を利用している状況となっています。一方で,潜在的に成年後見制度を必要とする人は800万人とも推定されており,現にドイツでは同様の制度の利用者が100万人程度いることからすると,制度の普及が必ずしも十分でない側面もあります。

 
当宇治法律事務所においては,申立て・後見業務の双方において業務を取り扱っております。また,申立ての具体的方法や,申立て自体の要否,任意後見のご相談についても幅広くご相談に応じております。
 また,当事務所の弁護士は,従前所属していた事務所において,社会福祉協議会等と連携してこれらの活動を集中的に行っておりましたので,当該分野について豊富なノウハウがあります。お気軽にご相談ください。



成年後見制度の種類と概要

 成年後見制度とは,「成年後見」「保佐」「補助」(後に行くほど,本人の症状が軽い場合に適用される制度です)の3種類の法定後見制度に,本人がのちに後見人となってほしい人を指定して事前に契約を交わしておく任意後見制度を加えた,4種類となっています。
 以下に,各類型別の簡易な表を設けていますので,参考にしてください。


    法定後見  任意後見 
 成年後見  保佐 補助 
 対象者  判断能力なし  著しく不十分  不十分  問題なし
申立権者 本人,配偶者,四親等内の親族,検察官,市町村長等    *1
 本人の同意(申立)  不要  必要(代理権付与)  必要  原則必要
 本人単独できること  日常生活に関する行為*2  民法13条1項*3以外  民法13条1項の一部以外*4  制限なし
 代理人のできること  財産に関する行為全部  家庭裁判所で決定  家庭裁判所で決定  委任契約の内容次第
*1 任意後見については,任意後見監督人を家庭裁判所で選任してもらうことにより,後見業務が開始されます。詳細は,こちらの任意後見の項目をご覧ください。
*2 本人の一身専属権については例外です。詳しくは,こちらをご覧ください。
*3 民法13条1項では,借金,訴訟行為,相続の承認・放棄,遺産分割,新築・改築・増築などがあげられています。
*4 同意権が必要な行為は,家庭裁判所で決定します。



 上記の表のとおり,補助は判断能力が比較的ある方向けの制度で,本人ができることも広く,申立てには本人の同意も必要となる一方,代理人のできることは狭くなります。成年後見は,その逆です。
 また,成年後見では,日常生活に関する行為(日用品の買い物など)以外は,例え成年後見人の同意があっても本人は単独ですることはできません。一方で,保佐・補助においては,表の本人単独できる行為以外の行為でも保佐人・補助人の同意さえあれば本人も行うことができます。

 成年後見において本人が行った本人の日常生活に関する行為以外の法律行為,保佐・補助において同意を得ずに本人が行った権限外の法律行為は,あとから取り消すことができます。例えば高額な買い物などをしてしまっても,その契約を無かったことにできます(但し,相手方がわからない場合や,お金を使いこまれてしまっているような場合には,お金自体が返ってくるとは限りません)。

 

成年後見制度を利用すべき局面

 では,成年後見制度はどのような場合に利用したらよいのでしょうか。典型的な場面は,以下の4つです。
 
ご本人の状況や持っている財産などの関係で,適切な財産管理ができるか,悪徳商法などにさらされないかが不安な場合,②施設入所や金融機関との取引などにおいて,法定代理人がいないと契約等に応じてもらえないような場合,③親族や同居人などから金銭を搾取されるなどの経済的虐待等を受けている場合,④遺産分割手続きや,貸金の回収など,法律行為を行う必要がある場合,です。
 やはり,上記のどの類型においてもそうですが,成年後見が必要な局面のうち多くの場合において契約問題を含めた法律問題が絡んでいます。複雑な法律問題が絡んでいるような場合には,初めから弁護士をはじめとする第三者専門家を後見人として指名するのが適切と言えるでしょう。

 以下,フローチャートに示しますとおり,申立て段階と選任後の段階,およびそれ以外の局面とに分けて,成年後見業務に概況を説明いたします(フローチャートの各項目をクリックすると,それぞれの項目の詳細にとびます)。


成年後見申立て
 ・申立ての流れ,期間
 ・申立権者
 ・市長申立てについて
 ・必要書類と診断書
 ・申立てにかかる費用
 ・裁判所による調査と鑑定
 ・後見人候補者
 ・審判前の保全処分
選任後の成年後見業務
 ・後見人が最初にすべきこと
 ・後見人のやるべきこと
 ・後見人のできないこと
 ・後見人のリスク
 ・後見人の報酬と利用支援事業
その他,成年後見に関連して
 ・日常生活支援事業
 ・任意後見
 ・複数後見のリスク
 ・リバースモーゲッジ


成年後見の申立てについて

申立ての流れ,期間

 成年後見については,申立てから終局決定までが,2013年時点で,2か月以内のものが約78パーセント,4か月以内のものが約95パーセントと,期間の短縮化が進んでいます。
 手続自体は,以下の手順で進んでいきます。

家庭裁判所への申立て→家庭裁判所調査官による調査(面接など)→鑑定(行われる場合は1割程度)→審判→審判結果の申立人への告知と本人への通知→通知および告知の遅い方から2週間経過後に確定,業務開始
 

申立権者

 申立権者は,本人,配偶者,4親等内の親族,公益の代表者としての検察官,市町村の長などです。他にも,例えばすでに保佐がついている状態で,グレードをあげるため成年後見を申立てるような場合には,保佐人や保佐監督人にも申立権が認められます。

 検察官が申立てをするのは稀ですし,本人か4親等内の親族の申立てが基本になってきます(弁護士が申立てをする場合は,これらの人を代理して行うことになります)。民法上,「親族」とは,6親等内の血族または3親等内の姻族のことを言います。親や子など,世代を一つまたぐと1親等増えますので,例えば兄弟は2親等になります。

 
現実には,成年後見手続きが必要な親族の中から協力してくれる申立権のある親族を探し,それが見つからない場合には別の手段(本人申立てや市長申立て)を検討していく,という流れになるのが一般的です。
 

市長申立てについて

 65歳以上の者,知的障害者,精神障害者について,市町村長に申立権が認められています。これは検察官申立てと異なり,実際によく用いられています。特に,高齢者の虐待事例においては,虐待の通報・届出があった場合に,市町村長には,施設入所などの措置をとるか後見等開始の審判申立てを行う義務があります(高齢者虐待防止法9条2項)。

 また,申立権者の有無の調査も2親等内の親族の調査で足りると解されているので,調査にも時間を要さないはずです(現実には時間がかかっているケースもあり,課題となっています)。
 虐待など,緊急の必要がある場合には,情報をいち早く入手可能な地方自治体も積極的に動いて,解決を図るべきことを規定している制度といえます。
 

必要書類と診断書

 必要書類は,以下のものです(ただし,各家庭裁判所で異なる場合がありますので,自身で申立てをされる場合には,必ず申立てをする家庭裁判所にご確認ください)。
 
 ・戸籍謄本→相続人を確定させる戸籍をすべて取得すべき家庭裁判所が多い。
 ・本人の住民票または戸籍の附票
 ・成年後見候補者の住民票又は戸籍の附票
 ・診断書
 ・登記されていないことの証明書
 ・財産目録,収支予定表,通帳の写しなど財産に関する資料
 ・本人,候補者の状況に関する照会書・申立書本体

 診断書・診断書付票は,各家庭裁判所に書式があるので,それを利用します。付票は,仮に鑑定をする必要が生じた場合,医師が引き受けられるかどうか,などを尋ねる書類です。
 診断書には,後見・保佐・補助のどの類型に該当するかの意見を尋ねる項目があり,当該意見と同一の類型の審判がなされるケースが多いです。もっとも,調査官面談などで,当該類型が不相当と考えられたような場合には,鑑定などを行ったうえで別の類型での審判がなされます。
 

申立てにかかる費用

 申立てに関する費用は,原則として申立人の負担となります(家事事件手続法28条1項,例外はあり,たとえば市長申立てでは本人負担とされるケースが多くあります)。各費用の項目については,以下のものがあげられます。

・申立手数料‐印紙代:800円,保佐や補助における代理権・同意権付与の審判は,それぞれ別個の事件となるので各800円が追加されます。
・登記手数料‐2600円
・郵券代(切手代)‐各家庭裁判所によります。4500円前後が一般的。
・鑑定費用‐5から10万円。もっとも実施されるのは1割程度。

 以上が,申立人が単独で申立てをした場合にかかる費用です。これに戸籍や診断書等の取得費用が加わります。弁護士が代理して申立てを行う場合は,別途弁護士費用がかかります。なお,司法書士は,書類作成業務は行えますが,申立ての代理をすることはできません。
 

裁判所による調査と鑑定

 裁判所による調査は,本人・申立人・候補者への家庭裁判所調査官の面接などの形で行われます。本人の状況や生活状態,申立ての経緯や候補者の適格性などを調査します。
 鑑定は,審理の短縮化などのために,9割方のケースで省略されているのが現状です。


後見人候補者

 裁判所の申立書の書式には,後見人の候補者を記載する欄があります。ここに,適切な親族や第三者専門家の名前を記載すると,特に問題がなければその候補者が後見人となります。
 適当な候補者が見当たらない場合,空欄のまま申立てを行うこともできます。その場合,家庭裁判所が名簿等に従って,任意の弁護士や司法書士を後見人として選任します。ただし,裁判所が各専門家に打診し,受け手がなかなか見つからないような場合には,審判までの期間が延びてしまうおそれがあるので,注意が必要です。


審判前の保全処分

 今まで述べてきたように,審判のための審理期間の短縮化は進み,2か月以内に審判が確定するものが約78パーセントとなっている状態です。しかし,それでも,何日のうちに後見業務が始められる,というものではありません。
 通常のケースであれば,これくらいの期間でも問題ないのですが,中には急を要するケースがあります。例えば,同居人から経済的な虐待や悪徳商法による被害を受けており,本人の預貯金が日々目減りをしてしまっているようなケースです。このようなケースでは,たとえ2か月後に成年後見が開始され,預貯金を後見人が管理するようになったとしても,それまでに財産が無くなってしまうおそれがあります(特に市長申立てなどでは,申立てをするための期間がさらにかかってしまう可能性があります)。


 そこで,そのような隙間を埋めるために設けられている制度が,①審判前の保全処分,②財産管理者以外の事件の関係人に対する指示に関する審判,③後見等命令です。
 
 これらは,成年後見等の申立てと同時に申立てをする場合が多いですが,申立て後でも行うことができます。

 ①審判前の保全処分においては,財産管理人が裁判所に選任されます。財産管理人は,後見人が選任されるまでの間,本人の財産を現状のまま保全することに努め,本人の財産が減少散逸したり不利益な状況に変動することを避けることを目的として任務を行います。

 具体的な職務は,・財産目録の作成,・家庭裁判所から命ぜられた処分・報告・計算,・財産の管理行為の3点です。財産の管理行為においては,成年後見人が選任されるまでの暫定的な職務であるという性質上,できることが制限されており,具体的には,保存行為と管理行為に限られており処分行為をすることができません(それでも,保佐・補助より代理権の範囲が広いことはあり得ます)。すなわち,例えば物品を売却することはできず,預貯金の払戻・預入や,医療費等の支払い行為などは行うべきということになります。処分行為をする必要がある場合には,別途,家庭裁判所に対して権限外行為許可の審判を申し立てする必要があります。
 また,審判前の保全処分を申し立てる際には,ア)後見開始の蓋然性(可能性が高いこと)と,イ)保全処分を行う必要性の二点を疎明(証明より程度は低いとされています)することが必要です。本人の状況について,関係者の陳述書や,関連する資料(悪徳商法の場合における,領収書や不要な物品の一覧・写真など)を証拠として提出することになります。

 
財産管理者以外の事件の関係人に対する指示に関する審判は,本人の同居者等の財産管理者以外の者に対して,本人の財産管理の方法や療養看護の方法を支持し,本人の権利を保護する制度です。ただし,あくまでこの指示は,勧告的効力しかなく,法的効力が発生するものではありません。

 後見命令は,本人の財産上の行為について,財産管理者の後見等を受けるべきことを命じるものです。
 確かに,財産管理人が選任されれば,財産管理人は,本人の財産の管理を行うことができるようになります。その一方,本人自身の財産管理の権限がなくなるわけではありません。本人のみが管理しているような現金・預貯金があり,それを例えば悪徳商法の支払い等に使ってしまったら,救済の手段はないことになります。
 しかし,後見命令も併せて出されているような場合には,本人が行った法律行為を取り消すことが可能となります。これによって,より本人の財産を保護しやすくなるといえるでしょう。
 ただし,本人の行為に制限を設ける制度ですので,要件もより厳格なものとなっており,具体的には,本人の財産の保全のために「特に必要がある」ことが求められますので,保全の必要性について慎重に検討する必要があります。また,原則として本人の陳述を聞く必要があり,手続きが増える可能性もあります。
 なお,後見命令は登記がなされますので,その費用として1400円の収入印紙が必要となります。

選任後の成年後見業務について

後見人が最初にすべきこと

後見人となった後,最初にすべき業務には,以下のものがあります。

・家庭裁判所の事件記録の閲覧・謄写→本人の状況把握のために早めに行うべきものです。
・本人,関係者との面会→上と同じです。
・登記事項証明書の取得→各種手続きを行うために必要となってくるので,事前に取得すると効率的です。
・財産目録・収支予定表の作成および家庭裁判所への提出→一ヶ月以内に調査し,裁判所に提出する必要があります。間に合わない場合,裁判所に対して期間伸長の手続きを行います。
・行政機関,金融機関等への届出→税金関係の届出や,口座の名義変更手続きを行います。

 後見業務は,最初の段階が最も大変な場合は少なくないと思われます。状況把握にも時間がかかりますし,手続も諸般のものが必要です。
 
このような場合は,一度にすべてをやろうとするのではなく,優先順位をつけ,順位の高いものから順々にこなしていくことが大切です。
 
例えば,本人や関係者との面会は,信頼関係構築のためにも遅れることが適当でないケースが多いと思われます。相続税の申告がある場合には,10か月以内に必ず行うべきでしょう。一方で,残金がほとんどないような口座で通帳等も後見人が保管している場合の名義変更手続きなどについては,多少手続きが遅れたとしても実害が生じるケースは少ないと思われます。

後見人のやるべきこと

 後見人の職務は,財産管理と身上監護であり,法律行為と直接関係のない介護などの事実行為は含まれない,と一般に言われています。もっとも,実際の後見人の業務は多種多様であり,またケースごとに異なってくるものですので,一括りに論じることは非常に難しいものです。ただその中でも,やるべきなのに怠りがちな業務や,見落としがちな業務というものは存在します。具体例について,以下,いくつか記載します。

税金の納付
 成年後見人は,本人が納税義務を負う場合,本人の法定代理人として本人の納税処理を行う必要があります。相続税の申告は,必要な場合は相続後10か月以内にしないと追徴のおそれがありますし,固定資産税も忘れずに納付をしなければなりません。
介護保険の検討
 介護保険は,65歳以上の第1号被保険者と,40歳以上65歳未満で特定疾病により介護や支援が必要と診断された第2号被保険者が,サービスを利用することができる制度です。成年後見が必要な状態ですと,介護保険サービスが利用可能である場合も比較的多いと言えます。本人がより安心した生活を送るためにも,後見人としては介護保険が利用可能かどうかは検討すべきといえます。
民事訴訟
 民事訴訟法31条では,成年被後見人は,法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができない旨定められています。ですので,後見人が場合によっては,訴訟行為を行わねばなりません。特に,貸金などについては,時効にかからないよう注意が必要です。
贈与・寄付についての慎重な判断
 本人が,第三者への贈与や寄付を希望しているような場合,その可否について慎重に検討することが後見人に求められます。まず,本人の経済状況に悪影響が出るような場合には,本人保護を優先することは当然でしょう。
 加えて,そのようなおそれがない場合でも,本人の判断能力を十分に検証し,贈与・寄付の意思が間違いなく認められるのかを検討しなければなりません。万が一,あとから別の者への遺贈や相続させる旨の本人の遺言書などが出てきた場合は,取り返しがつかないことになり得ます。
居住用不動産の処分
 本人の居住用不動産を売却したり,賃貸したりするためには,家庭裁判所の許可が必要であると,民法上定められています。

後見人のできないこと

 成年後見人は,本人の財産に関する行為全般,保佐・補助人は家庭裁判所で定められた行為について本人を代理できます。しかし,できない行為もあります。具体的には,以下の行為です。

①本人の一身専属上の行為
 遺言書の作成,養子縁組,認知といった一身専属上の行為については,成年後見人は行うことができません。ただし,人事訴訟(離婚訴訟など)に関しては,本人に代わって行うことができます。
②医療同意に関する問題
 成年後見人には,基本的に身体への侵襲を伴う医療に関する同意見はありません。病院側に同意を求められることはしばしばありますが,慎重な判断が必要です。
③利益相反行為

 本人と利害が相反する行為(両人が相続人である遺産分割など)はできませんので,特別代理人を選任する必要があります。

後見人のリスク

 成年後見人には,絶えず予想外のリスクが潜んでいます。その危険性について,常に認識し,最小限に抑える工夫をしておかなければなりません。以下,その具体例を挙げております。

本人が施設で暴行事件を起こし,他人にけがをさせた場合
 民法上,責任能力がない者の監督義務者は,当該責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する義務を負います。本人の状態如何によっては,成年後見人が当該義務を負う,すなわち,損害賠償請求される立場になる可能性は十分にあるといえます。
 後見人としては,自分が監督義務を怠らなかったことを立証する必要があります。本人の生活歴や病歴をよく把握しておくとともに,関係者に本人が過去にトラブルを起こしたことがなかったかなどを聞き取り,日々の面会や心身の状況管理,トラブル防止策の構築など,可能な限りの業務を行っていたかどうかがポイントとなってきます。
貴重品の保管
 本人の財産について,後見人には善管注意義務が課せられており,紛失・盗難があれば責任を負う可能性があります。貸金庫などにより,厳重な保管を行う必要があります。
本人の身元引受人・身元保証人について
 施設入所や病院への入院にあたって,身元保証人の引き受けを求められることがあります。身元保証人がどういうものを指すかは,各施設によってまちまちですが,中には本人の入院費等の債務について,保証を求めるものもあります。このようなものについては,仮に後見人が返済してしまえば,本人に対する求償権が発生し,利益相反の関係となってしまうことから,後見人が引き受けることはそもそもできないことに注意を払わなければなりません。
 施設側の求めている身元保証が,どういう内容のものであるのかを注意深く聞き取りし,成年後見としてできる範囲内でしか協力できない旨をきちんと伝える必要があるのです。


後見人の報酬と利用支援事業

 報酬は,当然に受け取れるものではなく,家庭裁判所に報酬付与の審判を申し立てる必要があります。報酬は,原則月額2万円で,本人の財産の中から支払われます。もっとも,本人の流動資産(預貯金や有価証券など)が5000万円以上であれば,月額5万から6万の報酬が支払われることもあります。
 一方で,本人の財産が十分になく,報酬を支払えないような場合には,各地方自治体の成年後見制度利用支援事業を利用することになります。要件等については,各地方自治体によって全く異なってきますので,それぞれにおいて確認する必要があります。市町村が助成の決定をすれば,市町村から後見人に助成金が支払われることになります。

その他,成年後見に関連する事項

日常生活支援事業

 日常生活自立支援事業とは,社会福祉協議会などが,判断能力が不十分な人に対して,地域での自立した生活が送れるよう,利用者との契約を行い,サービスを行うものです。以前は,地域用語権利事業(地検事業)と呼ばれていました。

 具体的なサービス内容としては,日常生活費の管理(預金の引き出しや支払い等),福祉サービスの利用援助,重要書類の保管,などがあげられます。
 あくまで,判断能力が不十分だとしてもある人向けの制度ですので,例えば後見相当の人が契約することはできません。また,ケースによっては,成年後見と併せて利用することもある制度です。


任意後見

 任意後見制度とは,本人が契約締結のために必要な判断能力を有している間に,将来に備え,後見事務を託したい人(任意後見人)と事前の契約によって,将来の後見事務の内容を決めておく制度です(もっとも,判断能力が不十分になった後に契約を行う,即効型などのパターンもあります)。

 この際は,公正証書によって,定めなければなりません。そして,いざ認知症の症状が出始めたという段階になれば,家庭裁判所に対して,任意後見監督人の選任を申し立てます。申立権者は,本人,配偶者,四親等内の親族,任意後見受任者です。本人以外の申立ての場合,本人の同意が必要ですが,本人が意思表示できないような場合には不要です。
 任意後見制度は,本人の判断能力がある間に,将来自分の代理を任せる人や,委任事務の内容を決めておくことができるので,本人の自己決定権に資するものです。一方で,任意後見においては,成年後見と異なり本人の権限を何ら制限することはできません。仮に,本人の状態を鑑みて権限を制限した方がよいような状態であれば,成年後見等の申し立ても検討すべきでしょう。

複数後見のリスク

 成年後見人の選任の際,その必要性があることと各成年後見人間での権限の分掌を具体的に記載することによって,複数の成年後見人を選任することが可能な場合があります。

 しかし,当事務所では,複数後見についてはお勧めしておりません。
 意見の対立によって,本人に支障が生じるおそれがあること,権限の分掌がない場合にはそれぞれが単独で代理権行使が可能となるので,矛盾した代理行為をしてしまうと取り返しのつかない損害が発生してしまうおそれがあること,権限の分掌をしたとしても相互の境界線があいまいであったり,収支を完全に把握できなくなったりすること,などがその理由です。

 
仮に,成年後見人の業務に不安があるようなケースでは,むしろ後見監督人を別途選任する,などの方法によって対処すべきでしょう。

リバースモーゲージ

本人の支出が多く,流動資産が無くなりそうな場合に有効な制度で,本人の不動産を担保として金銭の借り入れをうけることができる制度が,リバースモーゲージです。
 各社会福祉協議会が行っているものと,民間の金融機関で行われているものがあります。要件が厳格な場合がありますので,利用をご検討の際は,詳細について各機関にお問い合わせください。